さよならミニスカート
少し前から面白いと聞いていた「さよならミニスカート」
まず、この漫画の作者である牧野あおい先生、りぼん編集部、この漫画に関わっているすべての人にお礼が言いたいです。
私は1話から最新話まで、泣きながら一気に読みました。
このシーンで、涙が溢れ出てきました。
昔は、なんの疑問もなくスカートを履いて、可愛くなりたいと思っていた。
可愛くなることが楽しかった。
スカートを履くことが楽しかった。
女の子であることが、楽しかった。
なのに、殺傷事件がきっかけで、自分が女の子であることが嫌になってしまう。
これって、すごくすごく悲しいことだと思います。
自分の性別が嫌になったら、自分のことも嫌になってしまいそうです。
どうして女の子に生まれたのか、どうして女の子に産んだのか、どうして生まれてきたのか・・・。
私も似たような道を辿ってきたので、自分のことのように感じました。
だけど、主人公・神山仁那は、女の子に生まれて、アイドルになったことで、一人の少女を救っていました。
担任教師からセクハラを受けた六花は、アイドルの花恋(神山仁那)をみて、自分が女の子であることを受け入れられるようになります。
仁那も、そのことを知って、自分が女の子に生まれたことを少しでもポジティブに捉えられていたらいいな、と思います。
仁那には、誰よりも幸せになってほしいです。
自分の生まれを恨みながらではなく、大切な人たちに囲まれて。
仁那とは対照的なキャラクターとして登場する長栖未玖。
私ははじめ、せっかく良い漫画なんだから、女子同士を対立させないでよ・・・。と思っていました。
だけど、彼女は「名誉男性」枠なんですね。
日本の男尊女卑をややこしく、根深く、厄介にしている理由の一つに、「名誉男性」の存在があると思います。
性差別に関しては、単純に、
女性 VS 男性
の構図ではないのです。
実際は、
性差別に気づいている女性 VS 名誉男性&男性
です。
どういうことかというと、女性は幼い頃から、男性の都合の良い存在になるように刷り込まれていきます。
下着の写真を取られるなんて大したことない、痴漢なんて大したことない、触られただけで大袈裟、減るもんじゃない
男の子だからしょうがない、好きな子に意地悪したくなるのはしょうがない、女の子なんだから許してあげないと、笑顔で流せないといけない
女性の人生は楽勝、男性は勉強して出世しないといけない
未玖は、このように思い込まされているのです。幼い頃からの刷り込みによって。
男性にとって都合の良い存在にさせられているのです。
だから、男性に都合の悪い仁那を目の敵にし、男子の味方につきます。
これは、現実でもかなりよくある構図です。
男の人に服を脱がされて、写真を撮られたことが大したことないと社会から認識されていると、得するのは誰でしょうか?
犯人ですよね。
性犯罪者にとって、都合の良い解釈が広められているのです。
男の人がしたことだから、女の子は許してあげないといけない。この認識で得するのは誰でしょうか?
悪いことをする男性ですね。
未玖は、このような思い込みから、性被害にあったことを家族にも言えませんでした。
これで得をするのは?犯人です。
このシーン。光が六花に、女の子1人守れない情けない男だとバレたくないから、女の子には笑っていてほしいと思っていると指摘されています。
確かに、男性にはそんなプライドがあるかもしれませんね。
じゃあ、その男性たちは、何から女の子を守ろうとしているのですか?
同じく男性ですよね。
じゃあ、上で紹介したような刷り込みで、被害にあった女の子が黙ってしまうことは、大多数の男性にとっても不利益ではないでしょうか。
もしも性犯罪が軽視されない社会で、犯人がすぐに捕まり、重い罰を受けるなら、守る側も楽ですよね。
なんならもう守らなくても良いかも。
どうしてそんな風に社会は変わらないんでしょうかね?
男性の存在意義がなくなるから?弱い女の子を守らないとプライドが保てないから?
それもまた刷り込みです。
女性を守れなくても、弱い立場の人間に力を誇示しなくても、存在意義はきっとあります。
今の社会じゃ、誰も幸せになんてなれません。
まさかジャンプ+で「さよならミニスカート」が読めるなんて思っていませんでした。
この漫画が、ジャンプで連載していること。
そのこと自体に意味があると思います。
もちろん、りぼんの読者である女子小学生にも読んでもらいたいですが、ジャンプは成人女性や成人男性にも人気があります。
そういった層にも読んでもらえることが、嬉しいです。
無関係な女の子はいませんが、無関係な人間もいないと思います。
この国に生きる、すべての人間に関係があります。
図書館や家庭、病院の待合室などに置いて、いつでも誰でも読めるようになってほしいです。
道徳や総合の授業で取り上げるべきだと思います。